中年の備忘録

法務部門に所属するインハウスロイヤーの備忘録

法務が知っておくべき法律

法律知識ばかり持っていたとしても、優秀な法務人材と呼ぶことはできない。

法律知識以外にも、勉強することはたくさんある。

 

とはいえ、法律知識がないと、法務の仕事はやっていけない。

それでは、どういう法律知識が必要なのか。

以下のとおり、考えてみた。

 

まず、どの会社の法務であっても、共通して勉強すべき法律は、次に掲げるものだと思う。

1 民法

2 会社法

3 労働法関係

 

まず、民法は、私法における原則を学ぶ意味で、必須であろう。

民法が分からないと、それ以外の法律を学ぶにあたっても、苦労すると思う。

また、会社の中の法務に携わる以上は、会社法も必須だ。

さらには、従業員がいる以上は、労働法関係の法律も必須だ。

 

なお、私の考えであるが、民法と労働法を理解すると、ほかの法律についても、多くの場合、勉強がしやすくなる。

 

その理由は、こうだ。

民法は、対等な当事者間で契約をした場合についてのルールが定められている。

この点、使用者と労働者の雇用契約について考えてみると、民法を適用するのはよろしくない。なぜならば、使用者と労働者は、対等な力関係にないからだ。

そのため、使用者と労働者の関係においては、対等な当事者間の契約を想定したルールを定めた民法とは、別のルールが必要だ。これが労働法である。

したがって、労働法を勉強するにあたっては、民法の定めと何が異なっているのかという点を押さえながら勉強する方が、効率が良い。

 

このような勉強方法は、たとえば下請法の勉強法においても、役に立つ。

下請法は、元請と下請という対等な力関係にない当事者間の契約関係についてのルールであるが、要するに、下請法も民法のルールを変容しているという点匂いて、構造は労働法と同じなのだ。

このことから、労働法を勉強しておくと、下請法にも役に立つと考える次第である(下請法は例として出したが、他にも消費者法などが同じといえるだろう)。

 

さらにいえば、民法と労働法・下請法・消費者法の勉強を通じて、原則と例外の考え方も身につくと思う。

法律の勉強において、原則と例外をおさえるということは、とても重要だ。

 

さて、話が脱線してしまったが、本題に戻ろう。

 

次に、共通して必要な法律とまではいえないかもしれないが、多くの会社で必要な法律としては、次に掲げるものが考えられる。

 

4 個人情報保護法

5 公益通報者保護法

6 金融商品取引法

7 下請法、独占禁止法

8 景品表示法

9 民事訴訟

10 刑法、刑事訴訟法

11 知的財産法関連

12 廃棄物処理

 

これらの法律は、それぞれその会社に必要な範囲で押さえておくべきところであろう。

たとえば、個人情報保護法くらいであれば、全部の範囲について勉強しておくべきであろうが、民事訴訟法や刑事訴訟法なんかは、全部の範囲を勉強する必要はない。

民事訴訟法でいえば、弁護士に事件処理を委任した後において、弁護士がどういう手続きをとっているのかわかる程度で良い。

刑事訴訟法でいえば、ある日突然従業員が逮捕されてしまったときに、刑事手続きがどのように進行していくのかがわかる程度で良いと思う。

 

そのほか必要な法律は、会社ごとに異なってくると思う。

たとえば、小売業であれば消費者法関連は必須であろう。

 

最後に、法律知識が全くない状態で法務部門に行くことになってしまった若手社員について、一言。

こういう若手社員が、以上に掲げた法律を全部、一から勉強するというのも大変だ。そもそも、勉強する目的は法務の仕事をこなすためであるが、一から勉強を始めると、仕事をする時間が無くなり、本末転倒だ。

目下必要なところから順次勉強していくしかない、というのが現実的なアドバイスになるであろう。

とはいえ、必要なところから順次勉強しておけば良いと最初から考えてしまうと、結局、全部を勉強しないことの言い訳にもなってしまいかねない。

若手社員は、時間を見つけて、仮に目下必要がなかったとしても、民法会社法、労働法は順次勉強をしておくべきだと思う。